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復活教書

2020年 復活教書

「すべてのいのちを守るため」 ~教皇訪日にこたえて

大司教 ヨセフ 髙見 三明

 

 新型コロナウイルス感染が(3月23日時点で)百七十数カ国に広まり、32万人以上が感染し、約1万5千人が亡くなるという状況の中で、わたしたちも日々不安で不自由な生活を強いられ、主日のミサや黙想会の中止といったこれまでにない辛い体験をしています。この苦境を黙想の材料として考え、冷静に必要な対処を怠らず、主に信頼と希望をおいて一日も早い終息を祈りましょう。

 主イエスは、わたしたちの救いのために十字架上で死に、三日目に復活し、今もいつもわたしたちを生かし新たにしてくださっています。主に生かされているわたしたちが「すべてのいのちを守るため」(教皇訪日のテーマ)に働くのは当然でしょう。「すべてのいのち」とは、人間を含むすべての生物です。そしてすべてのいのちは、水や空気などの無機物を含む同じ世界の中でみなつながっているのです。

 

一、地球環境を守る

 主なる神は「天と地と海と、そこにあるすべてのものを造り」(出エジプト20・11)、地を「人の住む所として形づくられ」(イザヤ45・18)ました。この地球を、フランシスコ教皇様は「わたしたち皆がともに暮らす家」(回勅『ラウダート・シ』1番)と呼ばれます。そこには本来境界線はありません。

 ところが、近年、地球温暖化、異常気象、大規模な森林火災、干ばつなどが世界各地で人命や財産を奪い、多様な生物を徐々に絶滅させ、わたしたちの生活に深刻な影響を及ぼしています。その原因は、18世紀の英国での産業革命に始まる工業化だけでなく、人間が金銭と便利で快適な生活のために環境をむさぼったことにあります。

 今すぐ皆で具体的に行動しなければ、神様が与えてくださった本来の地球環境を取り戻すことはできないといわれています。水、電気、食料などを節約し、化学物質を含む洗剤やプラスチック製品などの環境汚染物質を減らし、身近な海浜、里山、街中など地域社会で清掃を行い、また自然の恵みを神様に感謝し、自然を学び、植林などして自然を保護することが必要です。司教協議会が今年から毎年9月1日~10月4日を「すべてのいのちを守るための月間」とすると決めたのはそのためです。

 

二、回心

 天と地は、主の慈しみに満ちている(詩編33・5、57・11参照)、つまり、「愛のこもった神の贈り物」(同回勅220番)なのです。神はすべてのものを造るだけでなく、空の鳥、野の花、野の獣などを一つ一つ養い、悪人にも善人にも太陽を昇らせて雨を降らせ、人間の労働を祝福されます(詩編104、マタイ5・45、6・26、30、使徒言行録4・17参照)。

 しかし実際の生活環境は、暴力、殺人、虐待、いじめ、ヘイトスピーチ、堕胎、人身売買、詐欺などで汚染されています。また世界各地で武力紛争や難民が絶えません。わたしたちには、世界に対する神の限りない愛の視点に立ち、感謝の念と惜しみない気遣いと見返りを求めないこころで一人ひとり、一つ一つのものを慈しむこと、つまり回心(同回勅220番)が必要です。

 なお、今年は広島と長崎の被爆および国連創設75周年、核兵器不拡散条約(NPT)発効50周年です。これを機に「核兵器から解放された平和な世界」、つまり神の慈しみが感じられ見える世界の実現に向けて、被爆や戦争体験を次世代に語り継ぐと同時に「核兵器禁止条約」の発効を早めるための活動に皆で参加しましょう。

 

三、連帯と平和のオリンピズムに学ぶ

 近代オリンピックの創立者P・ド・クーベルタンは、教育と国際交流と平和のために果たすスポーツの役割を確信し、1894年6月、パリ万博のスポーツ競技者連合の会議で古代オリンピックの復興計画を提案し、満場一致で可決されました。彼は、「オリンピックの理想は人間をつくること、つまり参加までの過程が大事であり、オリンピックに参加することは人と付き合うこと、すなわち世界平和の意味を含んでいる」と考えました。彼が提唱したオリンピズムは「スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国籍など様々な差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」ことにあります。国際オリンピック委員会(IOC)第9代会長トーマス・バッハ氏は次のように語っています。「自分と共感できる者とだけつながり、意見を異にする者とは対話さえしない。…そんな風潮が今、世界に分断と対立の連鎖を生みつつあるように思う。意見が異なる相手こそ、話をすることが大切なのに。スポーツはそんな対話を生み、互いの共通点に気づかせる場となれる。…橋を懸けるのは可能だと、対話をすることは可能だと示すこと、それが五輪の使命の一つだと考える」「分断や対立を深める国際社会が今まさに必要としているメッセージを、人々をつなぐ五輪の力を通じて、日本から発信する、それは日本そして世界にとって大きな意味を持つ」(『讀賣新聞』2020年2月20日)

 父である神と主キリストからの恵みと平和が皆さんと共にありますように。