コンテンツにスキップするには Enter キーを押してください

年頭の手紙

2025年 年頭の手紙

希望ある声かけを

大司教 ペトロ 中村 倫明

 あたらしい年と希望の聖年を迎えお祝いを申し上げます

 皆さまの中には、動物を飼ったり、植物を育てておられる方も多いと思います。中には今年の干支の「巳」を飼っている方もおられるようですが、身近には犬や猫を飼っておられる方が圧倒的に多いのではないでしょうか。それに、ご主人の皆さま方は、ご自分たちの愛犬や愛猫に「太郎ちゃん」「はな子ちゃん」などと一日に何度も声をかけ、愛情を込めて抱きしめておられることでしょう。また愛犬たちも、それに応えて懐いていることでしょう。

 わたしは小学生の頃、ヤギを飼っていました。「メリーちゃん」と名付け、兄弟がいないわたしにとっては、大切な話し相手、遊び相手でした。朝、小学校に行く前には「行ってきます」と声をかけ、帰宅の時には、わたしの気配を察知していたのか、名前を呼ぶ前から「メェ~」と鳴いて迎えてくれていました。わたしはメリーを可愛くて抱きしめたりなでたりしながらメリーに話しかけていました。一緒に野山を駆け巡ったりもしました。ですからメリーが亡くなった時には、悲しくてつらくて食事もノドを通りませんでした。あれ以来、生き物を飼うことをしていません。今でも、食事にヤギの肉が出ると「メリー!」と声をかけていた頃のことが思い出されて、箸がすすみません。

 

 昨年、大阪でのある研修会で、参加者のお一人に「わたしは花を育てています」とおっしゃる方がおられました。その方は「花を育てる時に大切にしていることは、水かけはもちろんですが、それ以上に声かけです。『おはよう』とか 『大好きだよ』とか声をかけていると、花もちゃんとこたえているかのように、きれいな花を咲かせてくれるんですよ」とおっしゃいました。そして、次のように付け加えたんです。「いい言葉をかけることです。わるい言葉や汚い言葉を使うと、きれいな花には育ちません」その話を聞いていた近くの参加者も「わたしも花を育てていますが、全くその通りです」とうなずいておられました。

 以前、飲み水に、良い言葉をかけると美味しくなり、汚い言葉をかけると不味くなるという話を耳にしたこともあります。

 動植物や自然物に対してもそうであるなら、言葉をなりわいにして生きる人間においてはなおさらのことでしょう。

 昔行われた研究で、声をかけて育ててもらった赤ちゃんと、声をかけてもらえずに育った赤ちゃんとの比較をしたら、声をかけてもらえずに育った赤ちゃんは、短命だったという話もあるようです。

 「声かけをしよう!」と、日常生活においては基本的でごく当たり前のことを言い続けて3年になりますが、信仰生活や教会生活においても、基本的で当たり前のことになっていますか?

 

 福音宣教の花を咲かせよう

 今年は、声かけにおいて、さらに一歩進んでいきましょう。

 声かけには、良い声かけと、悪い声かけがあります。積極的に思いやりのある良い声かけを行っていきましょう。わたしたちは、他人を褒めるよりも、相手を非難し否定する言葉や悪口を口にすることが多いです。その人に直接言わなくても、他の人たちと悪口を言い合って盛り上がったり、他人をけなす言葉や他人の悪いうわさ話をすることで楽しんだりしています。悪く汚い言葉は、必ず他人を傷つけ、人としての尊厳を殺していきます。他人の悪口を言うこと、うわさ話に花を咲かせることはやめましょう。それは良き花ではありません。福音宣教の花は救いの命のきれいな花です。

 希望の聖年の年でもあります。教会は希望の場所なのに、希望のない言葉が満ち溢れています。「召命が少ない」「信者が少ない」「若者が少ない」と希望がなく絶望しているあきらめの言葉です。神さまはわたしたちを救うことを決してあきらめていません。あきらめ嘆くだけで何もしないのはわたしたち人間です。神さまはいつもともにいて働き、わたしたちを命がけで愛してくださっています。「あなたは愛されています」「教会においでになりませんか」「司祭になって一緒に働きませんか」と笑顔のすてきな声で、希望ある言葉をかけ続けていくことを真剣に行っていきませんか。

🐤🐤🐤🐤🐤

おともだちへ

あけましておめでとうございます。
ことしは、きょうかいでは、「きぼうのとし」となっています。

きぼうとは、「かみさまからあいされているから、かみさまはともにおられるから、どんなことがあってもだいじょうぶ」ということです。

「あいしているよ。あなたはわたしのたからだよ。あなたはわたしのきぼうだよ」ということばを、

いちばんのきぼうであるかみさまから、また、おとうさんやおかあさん、まわりのひとからも、いっぱいもらってくださいね。

そして、みなさんも、おともだちに、おともだちをたいせつにする、あたたかいことばをかけてくださいね。
わたしもみなさんのことがだいすきです。

  だいしきょう なかむら みちあき

🐤🐤🐤🐤🐤

(『カトリック教報』2025年1月号)